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ビタミンEと老化の関係

老化学説のひとつに、老化現象を起こす体内の変化をフリーラジカル(遊離基)による化学反応で説明しようとする”老化のフリーラジカル説”があります。
生物は糖質や脂質などを酸化して生命を維持するためのエネルギーを得ていますが、このさい、不対電子をもつ遊離基が生成されます。
これは活性度の高い酸素(活性酸素、第6章3節)であり、生体内に存在するリノール酸やリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸と反応して過酸化脂質を生成します。
しかし、生体内には遊離基を消去する作用機構があり、グルタチオン過酸化物酸素、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼなどの酸素は、生体内の脂質に混じって存在しているビタミンEなどの遊離基消去剤を用いて、過酸化脂質ができるのを防いでいます。
上記のように、生体内代謝の化学反応によって遊離基が生じても、それを消去する機構が十分に働いている若いときには、過酸化脂質の蓄積は起こりませんが、高齢化とともに組織中の過酸化脂質は増加することが知られています。
このように遊離基が老化に関係が深いとすれば、生体内におけるもっとも重要な抗酸化剤であり、遊離基消去剤であるビタミンEが、老化や寿命に何らかの関与をしている可能性が考えられます。



かぜとビタミンC

アメリカの科学者ライナス・ボーリング博士が、”ビタミンCの大量投与がかぜ予防に有効である”と発表したことから、かぜとビタミンCの関係が注目されてきました。
ボーリング博士によると、もっとも有効なビタミンCの服用の仕方として、かぜのひきはじめに1時間ごとに500mgずつ服用することをすすめています。
日本人のビタミンC所要量は1人1日50mgであることを考えると、かぜに有効だとされている量がいかに多いかがわかります。
しかしその後、二重盲検法によって様々な試験調査が世界各国で行われましたが、ビタミンCがかぜに有効であるという成績は得られず、アメリカでは、現在、公式には否定されています。
ビタミンCとガン:ボーリング博士とキャメロン博士は、末期ガン患者に大量(1日10g)のビタミンCを投与することにより延命効果が現れるという報告をし、人々の注目を集めました。
これに対して、アメリカの有名な医療施設であるメイヨー・クリニックのクリーガン博士らの医師団は二重盲検法によってビタミンCのガン患者への効果の判定を試みましたが、ガン患者の生存期間および自覚症状の改善度についてビタミンCの効果はまったくみられないことを報告しました。
米国医学会は、ボーリング博士とキャメロン博士の報告は対象とする患者の選択に問題があり、さらに二重盲検法を採用していないと批判し、一方クリーガン博士らの報告を高く評価しています。
最近、イギリスのサットン博士らは、モルモットに大量のビタミンCを投与すると肝臓の薬物代謝系の酸素活性が顕著に低下したことから、ビタミンCの大量投与、生体の本来の代謝物質以外の有毒物や医薬など、一般の阻害的薬剤と同様に肝臓の薬物代謝機能を低下させる作用を強めると、大量投与のマイナス面を指摘しています。

イライラとカルシウム

「イライラしてるけど、カルシウムが足りないの?」というようなことがいわれています。
確かにカルシウムは神経刺激の伝達に関与し、神経系に対してマグネシウム同様、抑制的に働くことが知られています。
したがって、”カルシウムが足りないと神経が興奮する”ということは正しいようにも思われます。
生体内のカルシウム濃度は、骨などの硬組織>血液>細胞内の順で低下し、細胞内のカルシウム濃度は血液のわずか1万分の1です。
血液中のカルシウム濃度は、本文中に示したようにホルモンの働きによって極めて厳密にたもたれています。
カルシウムが不足すれば、小腸からの吸収を促進し、貯蔵部位である骨からカルシウムを溶出します。
過剰に存在すれば、骨へ沈着したり尿中へ排泄したりして血液中のカルシウム濃度を一定に保ちます。
したがって食品の消化吸収や絶食によって血液中のカルシウム濃度が若干変動したりしても、速やかに調整されてカルシウム欠乏のためにイライラするようなことは実際はあまりおこりません。
むしろ心配すべきは骨中カルシウム量の低下で、カルシウム欠乏状態が長期にわたれば、血液中のカルシウム濃度を維持するために骨のカルシウムが使われて将来の骨粗しょう症の原因となる危険のほうが重要といえます。